中国で食べられているお肉と聞くと何のお肉が思い浮かぶでしょうか?
蛇肉とか、犬肉とか、トリッキーなお肉が思い浮かぶかもしれません。
今回は中国ではどんな種類のお肉が食べられているのかをまとめてみました。挙げて行ってみると、思いのほかすごい数になってしまいました。
昔の日本では仏教の影響などもあって魚肉くらいしか食べなかったようですが、中国ではそういった宗教上の縛りも少ないためか、幅広い種類のお肉が受け入れられているのがわかると思います。
1、豚肉
中国で消費量ダントツ1位なのが豚肉です。1人あたりの消費量では全お肉の消費量に占める割合が70%を超えていて、他のお肉に大きな差をつけています。(中国产业信息)
日本で消費量トップなのは鶏肉ですので、日本とは少し事情が違うようです。
ソーセージにしたり、炒め物に入れたり、火鍋などの具になったりしますが、不思議なことに日本でいう「焼肉」や「豚めし」のような豚肉のみガッツリの代表的な料理が思い浮かびません。浙江省の东坡肉(角煮)、広東省の叉烧(チャーシュー)、東北の猪肉炖粉条、客家の梅菜扣肉などがしっかりと豚肉を使う料理でしょうか。いろいろなところで少しずつ消費されている感じだと思います。
イスラム教では禁じられているお肉ですので、回族が多く住んでいる地域や、新疆などではあまり食べられていないと思われます。
2、鶏肉
消費量第2位は鶏肉です。日本とは大きく違って、中国で消費される割合は全お肉の9%程度にとどまります。
炒め物やファストフードなど、食べる機会がけっこうあるので、これだけ消費量が少ないとは少し意外でした。
田舎の方へ行くとニワトリが田んぼや道端などそこらじゅうを歩き回っているのを見ることができます。
3、牛肉
中国の消費量第3位は牛肉です。こちらは鶏肉よりもさらに少なく、消費量の割合はわずか5%を超えるだけ。
確かに、中国でいう牛肉はちょっと高めのお肉、という印象があります。毎日のように食べられるお肉ではないですね(まあ日本でもそうか)
たとえば、私の学校の近くにある蘭州ラーメン屋さんでは、牛肉の入らない素ラーメンが11元なのですが、牛肉が入ると突如18元に割増されます。牛肉が入ると言ってもぺらぺらの小さい肉切れが数枚のるだけなんですが、それだけで価格が4割増しになるのはすごいこと。
それと不思議なことに、中国各地には牛肉が好きな地域、というのが点在しています。私の知るところでは、福建省の龍岩市、泉州市、安徽省の北部など。このあたりに行くと、やたらとたくさん「牛肉干」などが売られています。
以下のお肉はデータが見つからなかったので、街中でよく見かける順に紹介していきたいと思います。
4、羊肉
新疆からやってきた人は中国北部の羊肉を、これは羊肉ではないと言います。中国北部からやってきた人は中国南部の羊肉を、小さくて味がないと言います。
中国の北部は長い歴史上、遊牧民族の文化を相当吸収してきています。ですので当然のことながら、北部では羊食の文化もよく浸透しています。
道端で炭火焼きの「羊肉串」を売っているのもよく見かけます。私も羊肉が大好きなので、中国南部に引っ越してきた今では、北で食べまくっていたあの羊が恋しくてしょうがないです。
串刺しにして炭火で焼いたところにクミンなどの香辛料をまぶした「羊肉串」は本当にうまい。ばくばくとナンが進みます。
内臓もしっかり「羊杂汤」でいただくことができます。
5、鴨肉
カモ肉です。私の感覚的には、鶏肉と同じくらい登場頻度が高いお肉だと思います。日本ではあまり見かけませんが、中国では丸焼きにしたり、炒めたり、おおよそ鶏肉と同じように扱われます。
市場やスーパーへ行くと、ピンクの鶏卵と一緒に水色のカモ卵も売られています。カモ食の後進国からきた私にとってみれば、この2種類の卵を普段どうやって使い分けたらいいのか全くわかりません。
6、ガチョウ肉
中国語で「鹅肉」と言います。日本ではほとんど登場しないお肉ですが、これも中国ではよく見かけます。
しかし私どもには鴨肉とガチョウ肉の区別がつきません。
ハルビンで「铁锅炖」をご馳走になったときに、「肉は鴨肉にする?それともガチョウ肉にする?」と聞かれて困ってしまったことがあります。なんだその選択肢は、もっとほかにお肉があるだろうに。
しかも、食べてもそんなにはっきりした違いがわからない。
でも、中国ではこの2種類のお肉をしっかりと区別するのです。
7、魚肉
沿岸部に住む人々は海鮮魚をよく食べ、長江流域などの湖水地域に住む人々は淡水魚をよく食べます。
海鮮魚は日本で見かけるものとはそう変わりありません。しかし淡水魚に関しては日本では見かけない大ぶりの魚がたくさん売られていて圧倒されます。
たとえば、私は重慶名物で今や全国に広まりつつある麻辣グルメ「烤鱼」が大好きなのですが、 注文をするときに草鱼、黑鱼、海鲈鱼など、聞きなれないし見慣れないいくつもの淡水魚の中から種類を選ばなくてはいけません。
中国人は日本の刺身が苦手、という印象をお持ちの人もいるかもしれませんが、広東省では魚を生食する習慣があるので、生魚に抵抗のない人もある程度はいるでしょう。
8、貝肉
沿岸部でよく流通しています。乾燥させたものもよく売られています。日本にあまりないものとしては、内陸部でよく食べられるタニシがあります。唐辛子やにんにくでガッツリ炒めた大量のタニシをちゅっちゅと吸いながらビールを飲みます。ちなみにタニシは中国語で「田螺」。
9、ヤギ肉
中国南部で「羊肉」と言ったらヒツジではなくヤギ肉のことを指している場合があります。南の方にはヒツジがいませんから。福建省ではヤギ肉が重んじられていて、お祝い事などのときに一頭潰してみんなで食べる、ということをやったりします。
肉ではないのですが、私は泉州や漳州でワゴン車にヤギを乗っけてヤギ乳の移動販売しているのを見かけたことがあります。
10、ウサギ肉
これは市場の近くのお店などでよく売られています。これまで紹介してきたほかのお肉と比べて肉に圧倒的な臭みがあるため、一般的に濃ゆい味付けで食されます。
11、ロバ肉
以前河北省の保定市に住んでいたとき「驴肉火烧」が地元の名物だったのでよく食べに行きました。うま味の強い豚肉といった感じでしょうか。馬肉に近いという感じではなかったのが意外。コトコト煮込んで柔らかくしたお肉を、小麦の生地に挟んでバーガーにして食べます。
北京市や河北省河間県でも名物とされています。
12、カエル肉
田んぼの鶏と書いて「田鸡」と呼ばれます。小骨が少し多くて食べるのに手間がかかりますが、まさに鳥肉に近い味わい。プニプニした白身です。カエル料理専門の料理屋を街中でよく見かけます。おしゃれなデパートの中などにも入っているので、カエル食もそれなりにおしゃれなのでしょうか。
13、犬肉
中国の北から南まで、看板に「狗肉」と書かれているのをたまーに見かけます。私はまだ食べたことがありません。
14、蛇肉
たまーにメニューの中に潜んでいたりします。蛇の養殖場もありますし、野に出て罠を仕掛ける人もいます。
15、ヤク肉
チベット高原で広く飼育されている大型の牛です。西藏、青海、甘肃南部、四川西部など、チベット文化圏に足を踏み入れると、もはやヤクのお肉にしか出会うことができません。お店に入って「ハンバーガーありませんか?」と聞いたときにも「ヤク肉のしかないけど、いい?」と返ってきて笑ってしまいました。
中国語で「牦牛」といいます。
16、ハト肉
市場へ行くとカゴに何匹も詰め込まれて売られているのを見ます。
広東や香港などでは「乳鸽」という看板をよく見かけますね。ハトの若鳥で、ちょっと高級。ただしめちゃくちゃうまい、という感じでもありませんでした。意外と普通のお味です。
17、ネズミ肉
福建省西部に、「老鼠干」というネズミを干して乾燥させたお肉が売られているみたいです。今度時間があるときに食べに行こうと思います。
18、虫肉
雲南省や広西自治区など、東南アジアに隣接した地域でよく食べられているのでしょうか。
広西の南寧市に行ったときに、グルメストリートでわんさか虫を売っているのに出会いました。クモや幼虫やムカデやセミなど、基本的には全部油で揚げて、香辛料をまぶして食べるようです。
調べればもっといろいろな食べ方があるのではないかと思います。
19、トナカイ肉
ロシアとの国境近くに住むエヴェンキ族の人々が食べます。中国では現在、野生生物の狩猟が禁止されているため、エヴェンキ族も1年に1度だけ、新年のときに決められた頭数だけをいただくんだそうです。
番外編
福建省南部の漳州市に住んでいる友人に聞いたものを番外編としました。広東人はなんでも口にすることで有名ですが、彼の話を聞く限り、漳州人は広東人に匹敵するくらいなんでも食べるようです。
19、野鳥
親戚のおじさんが手作りパチンコの達人だ、という友人。パチンコ作って何に使うのかと聞いたところ、木に止まっている野鳥をとって食べるのに使うんだとのこと。
20、ワニ肉
なぜかたまにワニ肉が手に入るという。中国産ではないだろうとのこと。
21、ダチョウ肉
なぜかたまにダチョウ肉が売られているのを見るという。これも中国産ではないだろう、とのこと。
以上になります!
お肉の紹介だけでなんだかやたらと長くなってしまいました。
たいていの動物のお肉は登場しましたね。ちなみにここに登場していない馬肉と猫肉は、なぜか中国人にとって抵抗感があるためにほとんど食べられないそうです。まあゼロではないのだろうと思いますが。
さらにその他の野生生物については途中でご紹介した通り保護対象になっているため、ここにはあげていません。
ーーーー 2020年1月22日 追記 ーーーーーー
武漢の「华南海鮮批发市場」発祥の新型コロナウイルスが中国全土で猛威をふるい始めました。
感染源はどうやら「海鮮」市場と銘打たれた卸売り市場でこっそりと売られていた野生動物のようです。
この市場で野生生物の肉を売るお店の代表だった「大众牧畜野味」というお肉屋さんのメニューが、中国のネット上で出回っています。
写真を見てみると、虫類、ヘビ類、ネズミ類など、各種42種類の動物がずらっと並べられています。
これ以外にも、ハリネズミや鹿、ラクダ、ワニ、ガン、クジャクのお肉まで、この記事では紹介していなかった動物のお肉まで書かれています。
すごいですね。動物園でもないのにこんなにたくさんの動物のお肉を仕入れることができるなんで。
「大众牧畜野味」のお肉の価格表の画像はこちらで見ることができます。中国のニュースサイトです。
武汉"大众畜牧野味"闭店 多家商户前拉起警戒线|乘务员_新浪新闻
こういうお肉を販売する場合でも、販売許可証を所持していればそれで良いそうなのですが、野生動物の販売は地下ルートを通して秘密裏に仕入れている場合が多いため、これらのお店は違法営業であった可能性が高いということです。
中国で野生生物を狩ることは、法律で禁止されています。
具体的にいうと、中国の「野生動物保護法」で保護動物に登録されているものを捕獲、殺害した場合に、犯罪行為として扱われます。
なんだ、保護動物以外だったら食べてもいいのか、と思われるかもしれません。
しかし調べてみると、中国では保護動物に登録されるラインがかなり厳しめに設定されているみたいで、現在登録されている動物の数はおよそ1700種類にのぼります。
ヤモリやヒキガエル、果てにはスズメまで(!)保護動物として登録されているみたいですので、たいていの野生動物が狩猟禁止対象になっているみたいです。