中華、好きですか。
中華料理、みなさんはどれくらいの頻度で食べていますか?
異国の料理であるとはいえ、私たち日本人の生活にとって中華料理はとても身近な存在です。
家でさっと炒めて作れる手軽さ、そして日本じゅうどこへ行っても見かけることのできる中華料理屋さん。
中華料理屋さんに入れば安い値段で、あの「いつもの味」を味わうことができます。
今日も日本のどこかで、「うん、今日は中華にするか」という声が飛び交っていることでしょう。
日本の中華料理はマズイ?
みなさんはこんな話を聞いたことがあるでしょうか。
「日本の中華料理というのは、実は日本化した中華料理であって、本格中華とは別物になっている」
案外知られている話だと思います。
では、本場で育った中国人にとっては、日本の中華料理がどう映っているのでしょうか?
よく聞くのが、中国人観光客の日本の中華街への評価で、「何だか変な味付けになっている」というような話をよく耳にします。
中国で知り合った、日本に留学したことのある友人に聞いてみても、やっぱり日本の中華料理はイマイチだそうです。
私も初めて中国にやってきたころには、中国で食べる中華料理の味には感激したものです。どこで食べてもむちゃくちゃ美味い。とにかくウマい。
そして、
ああ、やっぱり日本の中華って、違うんだな。
などとセンチになってみたりしたものです。
どうしてこんなに美味いものが日本で流行らなくて、あんな味(あれはあれで美味しいが)に変わってしまったんだろう、なんてことまで考えました。
あれから3年が経ちましたが、
今振り返ってみると、当時の私は重大な見落としをしていたことがよくわかります。
日本の中華料理はウマい?
その見落としというのは、このブログでも何度か書いてきたことですが、つまるところ中国の異常なほどの多様さ、とくに南北の文化の差によるものでした。
具体的に言うと、私が1年目に住んでいた都市は中国の北方に位置していました。
そして、2年目からは中国の南方の都市に場所を移して生活しています。
現在住んでいる場所でも、日本に行ったことのある学生たちと知り合うのですが、おしゃべりの中で日本の中華料理について話が及ぶと、こんなことを言われました。
「え、日本の中華そこそこイケるよ」
!?
なんてこった。
もしかすると個人の好みというのもあるのかもしれませんが、実際のところ、中国の南方で聞く日本の中華料理の評判と、同じく北方で聞くその評判とは、かなり様子が異なることに気がつきました。
なぜなのか。
理由は簡単です。それは、中国の北方と南方で、料理の味付けの傾向が大きく異なるからです。
大雑把に言えば、北方の味付けはしょっぱくて辛くて油多め、南方の味付けは薄めや場所によっては甘めで油少なめ、こういう風に分けることができます。
こういった味付けの好みの違いは、中国人同士でも順応不良を起こすきっかけとなっています。
たとえば、私が現在所属している大学の学食の入り口に、学生が自由に書き込みのできる意見ノートが置いてあるのですが、ある学生が
「料理の味が薄すぎる!唐辛子ももっと入れて欲しい!」
と書いていると思いきや、違うページには、
「料理が辛すぎる!」
と書いてあるのを見かけたことがあります。
おそらく前者が北方出身の学生で、後者が南方出身の学生なのでしょう。こんなことを言われて、学食のおばちゃんはいったいどうしたらいいんでしょうか。
また先日、福建省の友人と江蘇省へ旅行に行ったのですが、彼曰く、「ここでは生きていかれない、生命の危険がある」「福建に住む北方人の苦労がようやくわかった」。彼にとって、江蘇省の料理はこれくらい慣れない味付けだったそうです。
つまり、同じ中国人であっても、自分の住んでいるところ以外の各地の食習慣については、実際に自分で行ってみるまでは知らない場合も結構あるということです。
ですので、もしコテコテの味付けに慣れた北方中国人が日本へやってきて中華料理を食べたとしたら、もちろん「なんだこれは、我々の食べている本格中華と全然違うではないか」ということになってしまうのです。
日本の中華料理屋さんの中華は本格中華なのか
ここから先は、日本の中華料理とは一体何者なのかについて、さらに詳しく見ていきたいと思います。
ウィキペディアの「中華料理」の項を見てみると、日本の中華料理は広東系、福建系、四川系の料理の影響を受けているとされています。(焼き餃子が東北から伝わったとされていますが、これについてはあとで触れます)
中国各地から、ちょっとずつ料理を持ってきて日本の中華料理が形成されている、ということになりそうです。
それでは料理別に見ていきましょう。
まずは「天津飯」を排除します笑
なぜならご存知の通り、この料理は明らかな日本での創作料理だからです。
広東系
広東系でいうと、チャーシューが広東料理です。「叉燒」の広東読みがそのまま輸入されていることからもわかると思います。
ワンタンも「雲吞」の広東語読みですね。(ワンタンはとても奥が深いので、後日記事を書ければと思います)
それから酢豚。中国語では「咕噜肉」というそうです。パイナップルを入れるのも南国広東らしいですね。
杏仁豆腐は香港発祥だそうです。
フカヒレスープは作り方が広東ぽいような気がするのですが、確証はありません。フカヒレ自体は中国各地で食べられているそうなので。
福建系
日本で受け入れられている福建系の料理というと、あまり思い浮かばないのですが、長崎ちゃんぽんは福建がふるさとですね。ウィキペディアによると、福州市福清の「燜麺」がその元祖とされていますが、私はまだ食べたことがありませんし、聞いたこともありません。未調査です。
しかし日本には福清出身の華僑がたくさんいるので、福清から伝わってきたというのは有りうる話です。
福建省一帯で圧倒的に有名なのは、むしろおとなり莆田市の「莆田滷麺」という、やはり海鮮や野菜をたくさん入れたかんすい太麺の麺で、こちらも長崎ちゃんぽんに見た目も味も酷似しています。
四川系
四川系の料理でいうと、各種炒め物の料理はほとんどが四川系なのではないかと思います。
四川料理を代表する「麻婆豆腐」、「回鍋肉」、「青椒肉絲」などはよほど人気があるのか、中国語の料理名までしっかり日本で普及しています。しかも中国語読みの名前で。
麻婆豆腐についてはよく「日本の麻婆豆腐は辛くない」などと言われていますが、中国にも辛くない麻婆豆腐はあります。麻婆豆腐は中国でも人気の料理なので、各地で現地化した味付けになっているものと思われます。
回鍋肉は中国では主に豚肉の脂身を炒めるところが日本と少し違います。
どうやらこれらの料理の日本風の改良や、日本での普及については、「料理の鉄人」などの料理番組で活躍した四川省出身の料理人、陳明建の影響が非常に大きいようです。
そのほか、中国語の料理名が日本であまり普及していない四川料理については、ここへ書いてみてもあまりパッとこないかもしれません。たとえば、中国でみんな大好き「宮保鶏丁」は、日本のメニューでは「鶏肉のカシューナッツ炒め」という、なんだかなぁという名前になってしまっています。
担々麺や麻婆ナスも四川系です。
以上が日本で受容された、広東系、福建系、四川系、の料理になります。
日本風に多少のアレンジがあるとはいえ、料理の基本的なベースは、本場中国とあまり変わりないと言えるのではないでしょうか?
以上?
何か大事なものが抜けていませんか?
そうです。
ニッポン中華料理の代表、ラーメン、餃子、チャーハンが抜けているではありませんか!
「ラーメン餃子チャーハンセット」が抜け落ちているとは失敬な!
ラーメン餃子チャーハンはどこから来たんだ!
・・・。
・・・しばらくラーメン餃子チャーハンの源流を探す旅に出たいと思います。
次回に続きます。