しぼりたてチャイナ

何かとディープな中国の知られざる魅力を、無限に生しぼりしていくブログです

どうしたら中国語っぽく発音できるの? 楽しく読める、教科書には書かれていない中国語の発音講座 α

 

 

みなさまこんにちは。 

 

中国語勉強してマスか?

 

中国語は、日本語と共通する漢字を使用しているのにも関わらず、日本語と発音が大きく異なりますね。

 

そのため日本人は語彙力や読解力で困ることがなくても、発音の勉強で苦戦する人が結構多いのではないかと思います。

 

私も苦戦しました。何年たっても出せない音とかもありました。(なぜかqの音が出せなかった)

 

私も学習しはじめの頃は、いろいろと参考書を買ったのですが、中国語の発音についてすっきりと書いてある本には最後まで出会うことができませんでした。

 

でも、中国各地の友人と交流する中で、私は気がついたのです。発音のポイントだけ押さえておいて、あとはみんな結構テキトーに発音している、と。

 

そのポイントさえわかっていれば、発音の練習ももっと簡単になるはずです。

 

さらに私は偶然にも大学の言語学の授業で、「中国語」という言語がどういう言語なのかについてもみっちり教わったので、そういう言語学的な背景も含めて、今回は発音練習をする際に私が「こんな解説があれば良かったのに」と思うツボやポイントをまとめてみました。

 

 

 

まず知っておきたいこと。

 

地方によってちょっとずつ違う普通話の発音

 

ひとつの言語を勉強しようというときに、できるだけ標準的な言葉を学びたいと思うのはみんなが思うこと。

 

そこでよく、中国へ留学するさいに「できるだけなまりの少ない地域の学校を選びたい」という人がいます。覚えた中国語を街中で実践することで、標準的な発音を身につけよう、という姿勢です。

 

しかし残念ながら、中国ではなまりの全くない場所などほとんどありません。首都である北京ですらコテコテの下町言葉が話されています。ハルビンの発音が標準的だと言われることもありますが、それでもやはり東北特有の発音がありますし、聞けばすぐに東北人であることがわかってしまいます。

 

標準的な場所、と言うよりかは、個人個人でしっかりと練習している人は発音が標準的になるし、自分で勉強することのないほとんどの人は各地の特有の発音を残している、中国語はこんな現状です。

 

イギリス英語も同じようなものですね。聞いているとそれぞれの街ごとにみんな発音やアクセントが違っています。日本ほど強く言語の標準化を要求している国はむしろ少ないんじゃないかと思います。地方ごとに発音に特徴が残されているのが普通なのです。

 

ですので、中国で話されている普通話(標準語) の発音や語彙なんかも、場所によって千差万別なんです。

 

中国語には難しい発音がたくさんありますが、中国人でもあったとしても、出身地によってはうまく発音できないようなことが多々あるのです。

 

完璧を目指す必要はない!

 

教科書通りの完璧な発音を目指そうとすれば、それはアナウンサーのような発音にたどり着いてしまうのではないかと思います。

 

NHKのニュースキャスターを思い浮かべてみてください。友人が突然ああいう話し方で話しかけてきたら、あなたはどう思うでしょうか。

 

アナウンサーを目指すのでなければ、はじめから完璧を目指す必要はありません。(むしろそれぞれ出身地のなまりが少しあった方が、かわいく聞こえます)。

 

 

さあ、ここから先はそれぞれの発音について、押さえておきたいポイントと、別に押さえておかなくてもいいポイントを解説していきたいと思います。

 

 

母音編

 

一番のポイントは、口を大きく開くこと

 

いつかの『金スマ』で、中国で大活躍するカリスマ日本語教師、笈川幸司先生が出演されていました。

 

先生の指導した中国人学生の日本語スピーチが番組内で放送されていましたが、そのへんの日本人が話す日本語よりもよっぽど引き込まれてしまうような、それは完璧な日本語でした。

 

先生の日本語の教え方にはいくつも独自のメゾットがあるのですが、その中でも特に注目したいのが、「日本語を発音するときにできるだけ口を開けるな」という指導です。

 

日本語を発音するとき、口を大きく開けがちな中国人。これを矯正するために学生に紙を一枚はませて、紙を落とさないように発音させるのだそうです。

 

つまり、私たち日本人が中国語を勉強するときに気をつけなければいけないのもこの点なのです。

 

そう、中国語を発音するとき、日本人は逆に口を大きく開けるように意識するといいんです。

 

もう大げさに開けていきましょう。

 

a

看 kàn

啊 ā

爱 ài

 

「a」の発音ですが、日本語の「あ」よりも口を一回り大きく開いて、もう少しのどの奥の方で発音します。日本語で特別元気よく「はい!」とお返事をするときの、あの口の開きぐあいに近いかもしれません。

 

i

一 yī

西 xī

鸡 jī

 

「i」の発音も同じです。日本語よりももっと口の両側を横に開きます。歯医者さんで「イーして」と言われるときの「イー」が近いかもしれません。

 

u

哇 wā(ua)

路 lù

酷 kù

 

「u」の発音は口を前に大きく突き出して、タコさんの口を作ります。日本語よりも口をすぼめていきましょう。

 

ちなみに中国人はすごいものを見たときに、タコさん口で「ううわーお」と言います。日本人の「わーお」とはタコ具合が違うことに注目することで、発音のコツがつかみやすいかもしれません。

 

摸 mō

哦 o

波 bō

 

「o」の発音も同じです。タコさん口で「オー」と発音します。できるだけ突き出していきましょう。「u」も「o」も、最初はくちびるが疲労するくらいまで練習します。

 

e

饿è

哥 gē

河 hé

 

さあ、ここへきてラスボス級の発音が登場です。日本人との相性が非常に悪い発音です。

 

中国語の「e」は日本語にはない発音なので、口を大きく開けるとかタコさん口を作るとかいう方法では通用しません。

 

朝ベットに横になったまま起き上がりたくないとき、「ウ〜〜〜」とうなるときの、あの部分で発音します。普通に日本語で「う」と言うよりも、のどの深いところを使うのがわかると思います。そしてのどをリラックスさせたまま、瞬間的にのどを引っ込めることで「ウ」と「ア」と「オ」の中間みたいな音を出すことができます。

 

ü

旅 lǚ

绿 lǜ

需 xū(発音はǖ)

 

「ü」も日本語にはない発音です。しかし「e」ほど難易度は高くありません。

 

歯医者さんで「イー」という口の形を作ったままくちびるを上下に近づけて「ウー」を発音します。前に突き出して「ウー」のタコさん口を作ろうとする筋肉と、「イー」の形を維持しようとする筋肉がせめぎ合う感じです。結果的には「ユー」に近い音が出てきます。

 

これもくちびるが疲れる発音ですね。はじめのうちは大げさに発音練習して筋肉を鍛えることで、あとで小げさにしても発音できるようになります。

 

er

儿 ér

耳 ěr

二 èr

 

こちらも日本語にはない発音になります。「e」の音を少し発音したあとに、すぐに舌を巻いて、口の中に空間を作ってこもったような音を出します。このとき舌は口の上部に接触しません。

 

この「er」は、北京語をベースにして作られた普通話(標準語)では積極的に取り入れられている発音なのですが、中国の南半分では完全に無視されている発音です。中国南方出身者に言わせてみれば、どうしてこんなにめんどくさい発音を普通話に取り入れてしまったのか、というところです。

 

中国南方では「er」の発音をそのまま「e」と発音します。

 

対して中国北方では、「er 化音」というこの発音のあるなしによって、単語の意味が変わってしまうことがあります。たとえば有名な例で言うと「冰棍」とは「氷の棍棒」で、「冰棍儿」が「アイスキャンディ」という意味に変わるように、中国南方出身者や外国人にとってはどこに「er」をつけるべきか付けないべきかが、非常にわかりにくいようになっています。

 

 

母音は以上になります。次は子音を見ていきましょう。

 

(※言語学的な細かいことを言うと、同じ「a」の発音でも子音との組み合わせによって何種類もの「a」の発音があるのですが、コミュニケーションをとる上で重要な要素ではないので、気にしなくてもいいでしょう)

 

 

子音編

 

さて、次は子音編です。 じつは日本人にとって中国語の子音はクセ者だらけ。どこから始めましょうか。

 

m

私が思うに、日本語話者にとってクセのない子音というのは、この「m」だけになりそうです。中国語の「m」は日本語と同じ発音ですので、安心して練習しましょう。

 

b、p  d、t  g、k

こちらの6つの子音はそれぞれ3セットに分けてみました。この6つの子音は、基本的には日本語の「バ、パ」「ダ、タ」「ガ、カ」と同じように発音しても、コミュニケーションに差し支えはありません。

 

ただし日本語とは若干の違いがあるので、少し細かいですがこちらにまとめてみます。

 

日本語や英語の「バ」「ba」などの発音は濁音と呼ばれます。しかし中国語の「ba」「da」「ga」は厳密に言うと濁音には分類されません。どういうことでしょうか。

 

こちらの表をご覧ください。

 

      bーーーーーpーーーーーph 

日本語   バ    パ

英語    ba               pa

中国語                      ba                   pa

 

一番上のアルファベットは、世界中の言語の発音を一つの体系にまとめた、国際発音記号「IPA」になります。そして下は日本語、英語、中国語の音をそれぞれのIPAに対応する位置に置いたものです。

 

ざっくり簡単にいえば、日本語や英語で「pa」と表記される音の発音は、中国語のピンインで表記される「ba」の音に相当する発音だということです。そして、日本語と英語の「ba」は、中国語で表記される「ba」の音よりも濁っている、逆に中国語の「pa」は日本語や英語の「pa」よりも音が軽い(空気が抜ける)ということです。

 

実際の会話でこんな違いを意識することはほとんどありませんし、個人的には日本語の「pa」の発音も、IPAでいう p〜ph の間で漂っていると思うので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

 

とりあえず、中国語の「ba」「pa」「da」「ta」「ga」「ka」これらの子音は、日本語よりも若干軽めに発音すると良さそうです。 

 

      dーーーーーtーーーーーth

日本語   ダ    タ

英語    da               ta

中国語                      da                   ta

 

 

      gーーーーーkーーーーーkh

日本語   ガ    カ

英語    ga               ka

中国語                      ga                   ka

 

 

h、f

お次は「h」「f」のセット。どちらも日本語にはない音になります。「f」は英語の「f」と同じ発音です。上の歯で下くちびるを挟んで発音します。

 

「h」は日本語の「は」とは明らかにちがう音になります。モンゴル語やロシア語を聞いた時にのどの奥のほうで空うがいをするような、かすれる発音がよく聞こえてきませんか?中国語の「h」もあの音になります。具体的には、のどの入り口をすぼめてのどち○こを振動させて発音します。

 

日本人はよくこの二つの音をうまく発音できないので笑われてしまいますが、安心してください!福建省の出身者もほとんどの人がこの二つを区別できないので、同じように笑われています。 

 

zhi、ji  chi、qi  shi、xi

前半の「zh」「ch」「sh」はいわゆる巻き舌音になります。 日本語にはない音です。英語の「ch」「sh」とも少しちがう発音になります。

 

中国語の巻き舌音は、正直いって発音が難しいです。私もうまく説明できないのですが、日本人としては「zhi」と「ji」、「chi」と「qi」、「shi」と「xi」をはっきり分けて発音するのが大切なのではないでしょうか。

 

そして、巻き舌音を練習して寄せていくというよりも、「ji」「qi」「xi」をはっきり聞きとれる発音に持っていくほうが効果が高いと思います。なぜなら、日本人の発音だと、「ji」が「zhi」よりに、「qi」が「chi」よりに、「xi」が「shi」よりになることが多いからです。

 

日本人が普通に発音する「シェシェ」は、どちらかというと「shie shie」に近くなってしまいます。「ji」は「時間」のジ、「qi」は「遅刻」のチ「xi」は試合のシ、というふうに、舌先と歯さきでしっかりと力強く発音するのがコツです。難しいですね。練習しましょう。

 

ですが安心してください!

 

中国の南半分と東北の一部地域ではこの巻き舌音がうまく発音できません。両方ごっちゃにして発音している中国人が相当数います(本人たちからするとちょっとずつ区別しているらしい)。台湾もそうですね。

 

z、c、 s

ひとつ前の「j」「q」「x」よりもさらに舌先で発音し、そのさいに若干の破裂音が発生します。

 

「zài(在)」は「罪悪感」のザイ、「cì(次)」は足の小指を角にぶつけて「痛っつー」というときのツー、「sā(撒)」は「最高」のサです。

 

l、r

日本人が英語学習で苦戦する「l」と「r」の発音。これがあろうことか中国語にも存在します。とくに「r」は発音が難しいですが、これらをはっきり区別して発音しないと、会話に若干の支障が出るかもしれないので、頑張って練習していきましょう。

 

まずは「l」ですが、日本語のラ行よりもしっかり舌で弾いて発音します。「li」などは舌を前に弾いていく感覚で発音します。

 

そして強敵「r」なのですが、これについては書きたいことがいっぱいあります。この記事は「r」について書きたいから作りはじめたようなものです。

 

中国語の「r」は、「有声そり舌摩擦音」などと分類されています。国際発音記号 IPAでは[ ʐ ]と表記されます。あれ?z っぽいアルファベットが入っていますね?そうなんです、中国語の「r」は少し「z」に近いところも、無きにしもあらずなのです。じっさい四川や重慶の方言ではこの「r」の発音がズーズー弁の「ズー」みたいな発音になるし、浙江省の北部でもフランク・ザッパの「ザ」みたいな発音になるのです。つまり、中国語の「r」は「Z」とかそっち系の音だと思うとイメージがつきやすくなります。

 

具体的にいうと、まず舌を巻いて、舌先が若干上あごに触れるくらいの位置まで持っていきます。そして声を出しながら息を漏らすと、「ジー」とも「リー」とも言えない摩擦音が出ませんか?その音です。ちなみに摩擦音が発生しないアメリカ英語のような「r」を発音しても通じます。

 

そんな非常に難しい「r」の発音ですが、安心してください。

 

広東省や香港出身の人たち、そして東北出身の人たちも多くが「r」の音をうまく発音できません。「r」というよりも「y」の音に近い音で代替しています。

 

Youtubeに李姉妹chという中国のあれこれを紹介している面白いチャンネルがあるのですが、ハルビン出身のお姉ちゃんが紹介する中国語は「r」の発音が「y」になっているのが非常に東北チックです。

 

-n、-ng

この二つを区別するのも難易度が高いです。これは「n(音)」と「ng(英)」というように音節の最後の発音のちがいなのですが、はじめのうちは何が何だか全然わかりません。

 

というのも、日本語の「ン」は、この二つの発音をごっちゃにして発音しているからです。日本語の「ン」を細かく分けると6種類くらいの発音に分けることができると、前にどこかで聞いたことがあります。「ニンジン」「カバン」など、単語によって舌の位置が微妙に変わってくるのです。

 

中国語の「nín(您)」は「ニンジン」の「ニン」です。歯茎に舌を当てて、音をシャットアウトします。

 

そして中国語の「níng(宁)」は「ニンゲン」の「ニン」です。のどの奥の方から鼻にかけてNの音が抜けていきます。これがngの音になります。

 

とくに「xiāng(香)」や「xiàng(像)」などの発音は、音をしっかりと鼻まで抜かさないと人に通じにくいことがあります。

 

うーん。発音の区別も難しいし、聞いてちがいを判別するのも難しい。ですが安心してください。

 

中国南部ではかなり多くの地域で「-n」と「-ng」を区別しません。自分の方言で区別しないので、自然普通話を話すときでもごっちゃにしてしまうことになります。

 

ひとつ、コツがあります。日本語で音読みして「ん」で終わる漢字は、中国語でもすべて「-n」で終わります。官、看、半、判、山、寒、探などはすべて「-n」で終わる単語となっています。

 

 

ying

これは別に書かなくてもいいかなと思ったのですが、当時誰も教えてくれなくて相当とまどった記憶があるので書きます。

 

中国北部で特殊な発音をする音で、「英語」の「英」を「yīng」ではなく「yiang」と発音する地域が結構あります。カタカナで書くと「イァンユゥ」みたいに聞こえます。

 

比較的標準的だとされる中国北方の普通話ですが、言語学の先生が「あなたたちの発音は間違っている」と一刀両断していたのが印象的でした。

 

 

子音はここまでになります。最後に、いくつかピンインの表記と発音がことなる例があるので解説していきます。

 

複合母音 実際の表記と発音が異なるもの

jiu

酒 jiǔ

牛 niú

休 xiū

 

「iu」の発音ですが、実はあいだには「o」が省略されています。じっさいの発音は「iou」 というふうになります。ただし「o」の発音はそこまではっきりと発音されません。

 

gui

归 guī

水 shuǐ

对 duì

 

こちらも同じく省略されている音があります。「e」です。じっさいの発音は「uei」となります。 同じく「e」はそこまではっきりと発音されるわけではありません。

 

lun

论 lùn

春 chūn

军 jūn

 

こちらは「e」が省略されています。じっさいの発音は「uen」という感じです。同じくはっきりとは発音されません。

 

qian

钱 qián

先 xiān

见 jiàn

 

表記とじっさいの発音がずれている例です。カタカナで書くならば、 「チィアン」ではなく「チィエン」という発音になります。つまり、「ian」は発音が「ien」のようになります。

 

 

 

おわりに

 

外国語は、発音のうまさが聞き手に安心感を与えます。

 

文法がおぼつかなくても、発音がきれいだと「うまい」とみなされます。 

 

『中国てなもんや留学記』という谷崎光さんの書いた愉快な中国留学記の中から、こんな格言を紹介したいと思います。

 

「自分の発音できない音は、聞きとれない」

 

実際はそんなこともないのですが、自分で発音できた方がいろんな発音が聞き取りやすくなるのは事実です。

 

 

気の利いた図や画像など一切使わずにここまで書いてきましたが、 もし読んでくださった方がいらっしゃいましたら感謝感謝です。

 

最後に中国人と変わらないくらい流暢な中国語を話す日本人を2人紹介して終わりたいと思います。

 

小松洋大さん、西田聡さんの動画

https://www.youtube.com/watch?v=G67hGxQFkJ0

 

日本人が中国語を極めるとはどういうことなのか、参考にしてみてください。

 

以上。