しぼりたてチャイナ

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「明日24日から始まる春節の連休に合わせて・・」日本政府の初期対応を遅らせたこのフレーズに潜む大きな罠とは?ビッグデータを探る

 

 

「明日24日から始まる中国の春節連休に合わせて、全国各地では感染拡大防止の対策がとられています」

 

今年の1月下旬、

 

新型コロナウイルスが爆発的に拡大し始めた当初、ニュースなどでよく耳にしたのがこのフレーズです。

 

私はニュース番組や政府の記者会見などでこのフレーズを耳にするたび、大きな違和感を覚えていました。

 

24日から始まる休みに備えて?

 

???

 

確かに、国家の定める公式の春節休みは24日からということになっています。けれど誰が24日ギリギリまで仕事をしているかね。

 

翌日の25日には新年を迎えるわけです。現代日本のどんな祝日よりも重視されている1日です。公式の休日ウンヌンに限らず、多くの人々がもっと早くから休みに入っているものです。

 

私の感覚としては旧正月の2週間前から列車のチケットが買えなくなってきます。今年で言うなら、1月の頭からもう帰省する人たちが出てきていました。

 

そんなことを考えていたら、中国の地図アプリ大手の百度地図が春節期間の人口の移動(春运)についてのビッグデータを公開しているのを見つけたので、こちらで紹介してみたいと思います。

 

「百度遷徙」

 

ビッグデータはこちらの「百度遷徙」というサイトで閲覧することができます。

 

こちらがサイトのリンクになります:

qianxi.baidu.com

 

まずは試しに、中国南方の巨大都市、広州市の人口の出入りを見てみましょう。

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画面一番右上の窓わくで、閲覧したい都市を選択します。

 

左半分には広州から出ていく人の流れが地図に表され、右側には出ていく人々の目的地と、その人数の比率が示されています。

 

真ん中上部にある「显示迁徙趋势」にチェックを入れると、日付ごとのグラフが表示されます。

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こちらに表示されているグラフは「迁出」(遷出)、つまり、広州市から出て行く人口のグラフです。

 

(※ここで表示されているのはあくまで「指数」であり、実際の人数ではありません)

 

黄色い線が今年の人口流出の変化で、白い線が昨年の変化です。グラフ下の日付が新暦、上の日付が旧暦で、2年分のデータを旧暦で合わせたグラフです(旧暦の正月は毎年ずれがあるので)。そして私が赤くマークしたところが旧正月の新年になります。今年は1月25日が正月一日でした。

 

ご覧になっていかがでしょうか。1月4日ころから広州市を出ていく人が増え続け、今年は1月21日にピークを迎えているのがわかると思います。

 

そして連休が公式に始まる24日には、すでにピークが過ぎ去っているのがわかります。新型コロナウイルスのなかった昨年の動向も、おおむね同じ傾向にあります。

 

それでは、気になる武漢市のデータを見てみましょう。

 

武漢市

 遷出

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こちらが武漢市の流出人口のグラフです。

 

ちょうど新型コロナウイルスのニュースが公式に流れ始めた1月19日、20日ころから人の流出が急増しています。街の封鎖や感染を恐れ、急いで武漢を離れる人の流れが目に見えるようですね。

そして24日の午前10時、武漢封鎖が決行されます。

 

それ以降の人の流出が皆無になっているのがわかりますね。

 

肝心の春節休みですが、武漢の場合は1月のはじめからすでに人口の流出が始まっているのがわかると思います。早めに仕事を切り上げて実家に帰ったり、旅行へ行ったりしたのだろうと思います。

 

 遷入

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こちらは武漢に入ってくる人口のグラフです。

 

それまでは例年通りだった人口の流入が、1月22日ころから急に下がり始め、以降は公式の休み期間が終わってからも一向に人々が戻ってこない様子が見て取れます。

 

 
 目的地

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こちらは武漢市から流出した人口の目的地です。

 

目的地トップ10はすべて湖北省内の近隣都市でした。ウイルスが現在湖北省各地で猛威をふるっているのも納得できます。

 

武漢市を見たついでに、他の大都市のデータも見てみましょう。

 

北京市

 遷出

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北京を出て他の場所へ行く人の数が、旧正月で落ち込んだまま戻ってきません。みんな北京市内でじっとしているんですね。


 遷入

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北京へ入ってくる人々は、1月26日以降に微増しています。これは観光などで周辺都市から北京を訪れる人々だと思われます。一部の企業が営業を再開した休み明けの2月10日には若干の人口の変動が見られます。

 

深圳市

 遷出

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 遷入

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上海市

 遷出

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 遷入

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東莞市

 遷出

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遷入

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連休の開始日は、人口移動のピークではない

 

どこの都市にしても、今年の春節連休の開始日である24日は、帰省や外出のピークではない、ということが見てとれたかと思います。

中国政府の公式の休日がいつからスタートするかだけを見ていてはいけません。

 

旧正月が1月25日であるなら、そこから逆算して三週間ほど前から人口の移動が始まっていると考えるといいでしょう。

 

 

・ちなみに、春節大移動に合わせた鉄道の運送体制を「春運」と言い、こちらも公式な開始日が発表されています。今年の場合は旧正月の15日前、1月10日が「春運」の正式な開始日でした。

 

この日から2月18日の「春運」終了までの40日間は、チケットの販売体制や列車の運行本数が通常と異なります。

 

ですので、こちらも春節の人口移動開始の目安として見ることができるかもしれません。