小話です。
最近唐辛子のことばかり書いているのですが、残念ながら今回もまた唐辛子に関する話題です。このままでは唐辛子ブログになってしまいますね。
修学旅行の引率を担当する
以前、湖南省の中学生が福建省へ修学旅行にやってくる、ということで引率をお願いされたことがありました。
中国でも修学旅行があるんだ、と意外に思われるかもしれませんが、これはここ数年で急速に普及し始めた取り組みです。
修学旅行を請け負う会社を最近立ち上げたという先生にお会いして話を聞いてみると、やはり日本の修学旅行のことも参考にしている、ということで、実際に日本へ研修にも行ったことがあるのだそうです。
ちなみに中国語ではこれを「研学旅行」と言います。日本でいうところの「学び」を「修める」ために行く旅行というよりも、普段学校で缶詰になって勉強しているので、たまには離れた場所に行って、気分を解放しよう、ついでに何か勉強できるといいね、というニュアンスが強いのかなと思います(まあ日本も同じようなものか)。ですので、3年生の参加者もいれば、1つ学年が下の2年生の参加者もいました。
4日間で泉州や厦門など、いろいろなところをまわりました。チームで「協力」することが必要になる様々なアクティビティに参加したり、観光地を巡ったりと、内容盛りだくさんの修学旅行でした。
その中でも特に印象に残っているのが、「唐辛子」に関するエピソードです。
コンビニで買い食いしたがる学生たち
修学旅行の2日目の夜のことでした。
みんなで晩御飯をお腹いっぱい食べ、学生もホテルの自分たちの部屋に戻って、就寝の準備に入ります。
私ともう1人の引率の大学生は、学校の先生に頼まれたので、ホテルのロビーに座り、学生が勝手に出てきて外で買い食いすることがないように見張りをしていました。
すると、学生が1人下りてきて「コンビニでちょっと買い物がしたい」と言います。私が「なんかダメらしいよ」と伝えると、しぶしぶと引き返していきます。また2人下りてきて、コンビニに行きたい、と言います。私が「ダメらしい」というと、また素直に帰って行きます。
そんなこんなで絶え間なく学生が下りてくるのです。どんどん下りてきます。ここまで多いと、引き止める側としてもなんだか申し訳なくなってきてしまいます。
何組かの学生を送り返したころ、今度は外から、2人の学生がホテルのロビーに帰ってきました。手にはコンビニで買ったパンとビニール袋を下げています。すごく得意げな顔を浮かべて、私に向かってこう言います。「ホテルの裏口を見つけたから、もうみんなコンビニ行ってるよ」
ほお、なかなかやりおる。
そんなにコンビニに行きたいならば、ということで、私たちが一緒について行くならば外へものを買いに行ってもよい、という条件にルールが変更されました。
私も何人かの学生について行って、彼らがいったい何を買っているのか、見てみることにしました。
見ると、パンやらお菓子やらカップ麺やらを、やけに真剣な表情で選んでいます。
「さっきご飯食べたばっかじゃん、すごいね、そんなに大食いなの?」と聞いてみました。すると、
「さっきは何も食えなかった」
というのです。
「どうした?体調悪い?」
と聞いてみると
「いや、味、ないから」
「!!!」
「毎食毎食変な味がするから。1日ほとんど何も食ってないって子、結構いっぱいいるよ」
なるほど。
これでどうして学生がそんなにコンビニに行きたがるのか、理由がわかりました。
福建省適応不能を起こしていたのです。
湖南省の学生が福建省へ行くという致命的な選択
中国はこれだけ広い国土ですから、料理の味付けが各地で大きく異なります。
少し場所を移動すると味の好みが大きく変わってしまうため、国内で旅行などをすると、食の適応ができない人が続出します。濃い味、薄味、甘めの味付け、など、様々な好みがある中でも、特に重大な問題なのがまさに「唐辛子を使うかどうか」なのです。
湖南省は中国でも群を抜いて辛い料理で知られる省です。四川料理よりも名高い辛い省です。
それに対して福建省は中国でも群を抜いたゼロ辛エリアなのです。薬草やらきのこやらを使った、極端に薄味の料理をこのむ土地柄です。
湖南省で唐辛子と戯れながら育ってきた真っ赤な子供たちが、突然辛いものから離れることなどできるでしょうか?突然薄味に適応できるでしょうか?
学生たちは、おそらくこれまでに経験したことのないレベルの不安におののいていたことでしょう。
翌日の朝ごはんでは、唐辛子調味料「老干妈」を大事そうに抱えた学生がちらほらおりましたとさ。