残暑厳しい9月、中国の大学では、入学してきたほとんどすべての新入生が寮に入り、キャンパスの中で新たな生活をスタートさせます。
全国各地から集まってきた学生が、それぞれのドミトリーに振り分けられ(押し込められ)、これから4年間の生活を始めるのです。
みんな、うまくやっていけるでしょうか?
あらあら、どうやら喧嘩が始まってしまったようですね。
中国「北方」(ベイファン)と「南方」(ナンファン)
なにが喧嘩の原因なのでしょうか。
一言でいうと、「文化の違い」です。
パッと見ただけではわかりにくいのですが、中国国内には、ちょっとしたことで喧嘩に発展してしまうほどの文化の違いが存在しています。
日本では「西」と「東」という分け方で文化の差異が説明されることが多いですね。アメリカでも西部や東部、南部や北部と分けられます。
中国では、「北方」(ベイファン)と「南方」(ナンファン)という分け方が使われます。キタとミナミに分けるんですね。
この中国の南北文化論はとても有名な話なので、もしかすると聞いたことがある人もいるかもしれません。
ちょっとこれを見てみてください。
これは「知乎」という中国の質問サイト(Yahoo知恵袋のレベルアップ版的な感じ)で、「南北差異」と検索した結果、出てきた質問です。
上から訳すと、
「北方のどんなことが南方人をびっくりさせる?」
「北方のご飯の量って南方よりも多いの?」
「北方人が南方に行って暮らすってどんな体験?」
「南方人が北方に行って遭遇した笑い話」
「北方の経済が南方の経済に勝てないことについて、どう見る?」
「なんで北方人は生の野菜が好きなんだ?」
ご覧の通り、この類の質問がたくさんあることがわかります。
こんなに違う!中国のキタとミナミ
ここから先は、キタとミナミの具体的な違いについて、ずらっとリストアップしてみました。
かなり面白いと思います。
(ちなみに中国の南北の境界線ですが、だいたい長江よりも少し北側、淮河のあたりにあると思ってみてください)
考え方
北方:保守的(どちらかといえば)。
南方:開放的。北京からから離れていることと、上海や広州や香港などの大きな港から常に新しい外国文化が流入しやすいことが原因か。
身長
北方:総じて高い。男性は北京の平均身長がもっとも高く、175cmもある。女性は山東省の平均身長169cm!がトップ。中国では相手を探すときに身長を重視する傾向があるので、北方の女性は南方に来ると苦労する。南方の男性が北方へ言っても同じ。
南方:総じて低い。男性は四川省がもっとも低く、166cm。女性は雲南省で159cm。日本人と同じくらい?
おしゃべり
北方:話し出すと流れるように止まらない。
南方:北方人ほどおしゃべりではない。寡黙を好む人が多いかも。
普通話(中国の標準語)
北方:自分は訛りのない普通話を話していると思っているが、むしろ訛りのない人がかなり少ない。
南方:自分の方言の発音に影響されて、訛りがなかなか取れない。普通話のいろいろな音がうまく発音できないので、北方へ行くといつも北方人に馬鹿にされてしまう。そして北方の方言を元にして現代普通話が作られたことに不満を抱く。
方言
北方:聞こうと思えばなんとか聞き取れるかも。方言同士の主な違いは声調。
南方:お手上げ。各地の方言の種類も多すぎるし、全く違う言語に聞こえる。
お店
北方:夜の閉店時間がえらく早い。北京などは21時をすぎるとバタバタとあらゆるお店が閉まり始める。夜中にお腹が空いたら辛い。朝の開業時間はそこそこ早い。
南方:21時はまだまだ夜の始まり。真夜中でも賑やかなところが多い。個人の飯屋であっても明け方までやっているところが結構あって驚かされる。朝の開業時間も結構早い。
小銭
北方:紙のお札が多い。
南方:コインが多い。
ご飯の量
北方:総じて多い。炒め物を一品頼むと、大皿にどっさり盛られて出てくる。なので南方人が北方で初めてご飯を注文するときにはたいてい頼みすぎて失敗する。
南方:総じて少ない。何人かで食事に行くときには何皿も頼む必要がある。広東省の点心などが典型的な例。私の知っている中では、香港や広東省のあたりのご飯の量が一番少ないような気がする。香港での麺一杯は、感覚的にだいたい北方の麺の三分の一しかない。
主食といえば?
北方:マントウや餅(日本のもちとは違う)、麺類などの小麦食品。
南方:お米、米の麺。
おかゆといえば?
北方:アワ(小米)
南方:白米
お会計
北方:たいてい誰か一人が男気を見せて全員をおごろうとする。そしてレジ前で誰が支払うかで揉める。
南方:比較的割り勘が好き。それもきっちり細かい額まで計算する。もちろんおごることもある。
市場で売る卵
北方:一袋一袋売る。
南方:一個一個売る。
市場で売る大根
北方:一本一本売る。
南方:一切れ一切れ売る。
にんにくの食べ方
北方:生のままかじる。お店のテーブルの上にはだいたいニンニクがコロコロ置いてあって、利き手に箸、その反対の手でニンニクを持つのが標準スタイル。
南方:刻んで調味料に使う。日本と同じ。
料理の味付け
北方:濃いめ。アブラ多め。辛め。
南方:薄かったり甘かったり辛かったりといろいろ。
北方:甘味。ナツメの砂糖漬けなどを入れる。
南方:塩味。肉や野菜や海苔や卵黄など、いろんな具が入る。
冬至に食べるものといえば?
北方:餃子。
南方:湯円(タンユァン)。
冬
北方:外は極寒だが、室内はとても暖かい。半袖で十分。
南方:外も極寒だが、室内も極寒。しかも湿度があるので、骨にしみる寒さ。
大学の寮
北方:だいたい8人部屋か10人部屋。6人部屋ならかなりいい方(留学生は多少優遇される)。トイレやシャワーは共同で、しかも個室の門がないことが多い。
南方:4人部屋のこともあり、2人部屋のこともある。トイレとシャワーは各部屋ごとにある。
お風呂
北方:何日もシャワー浴びないとか普通。搓澡(垢すり)が好き。
南方:シャワーは割と好きだが、冬は寒いので毎日は浴びない。
政治の学習
北方:小中高を通じて、しょっちゅう習近平のビデオを見て学習したり、横断幕にスローガンを書いたりする。
南方:そんなことは今までほとんどしたことがない。
商売
北方:一家が暮らしていけて、友人や同僚と楽しくやっていければそれでいい。
南方:やるなら一族のために徹底的にやる。家族を連れて東南アジアやアメリカやヨーロッパなど海外へ移住するのもいとわない。
池
北方:冬場凍結するので、スケートがうまくなる。
南方:凍らないが、泳ぎを練習できる。
ゴキブリ
北方:小さな虫。南方人がなぜゴキブリをそんなに怖がるのか理解できない。
南方:巨大昆虫。北方人がミナミのゴキブリを見て腰抜かすのを見て楽しむ。
男友達同士
北方:やたら肩に手をかける。
南方:肩に手はかけない。
ネギといえば
北方:長ネギ。
南方:小ネギ。
こんなもんでしょうか。まだまだたくさんあったような気がします。
以上はよく耳にする話や、実際に見たこと、ネット上の討論などを参考にしています。個人的な恨みや差別意識などは全くありませんが、もし気を悪くされた方がいたらすみません。
キタとミナミで、言葉が違うのはもちろんのこと、その根本的な考え方のロジックまで違うことがあって、それがトラブルの種になったり、笑いのネタになったりするのです。
このように、中国のキタとミナミというのは、悲劇の元であり、笑いの元でもあり、気まずさの元でもあり、話し出すと止まらない、いつまでも尽きない話題のタネなのです。
キタとミナミがちがえば各地の顔立ちだってちがう。
こちらでは、中国全部の省と自治区を全力で紹介してみました。