このところ、三峡ダムが変形しているのではないか、というニュースが出回っていますね。
このニュースは、もちろん中国でもしっかりと話題になっています。
ネット上でダムに関する様々な文章が飛び交っているほかに、中国のチャットアプリ、Wechat のグループ内の会話でも、こんど三峡ダムに観光にいく叔母をどうやって止めたらいいんだろう、などと相談を持ちかけている人も見かけました。
しかし結局のところ、今回の事件は Google map の衛星写真の問題だった、というのが真相でした。
完全なデマだったということです。
そして中国でも比較的冷静なネットユーザーたちは、「少し考えればデマとわかるでしょう。こんなことまで国民は簡単に信じ込んでしまうなんて、我が国の科学教育は遅れすぎている」などと発言していました。
が、しかし。
三峡ダムの変形について、グーグルで日本語検索をかけてみると、「三峡ダム崩壊寸前!」とか「三峡ダムやばそう」などと、まことしやかに書き込んだ個人記事がたくさん出てきました。
Google map の画像の歪みが、日本でもやたら話題になっているのです。一体どうなっているのでしょうか。
確かにダムが本当に40メートルも変形していたらそれほど賑やかになるのもわかりますが。これはもはや「中国はやばいところだ」信仰のあらわれではないでしょうか。
チェンマイ国際空港の滑走路が変形!
もしも Google map の衛星写真上のダムの歪みが本当ならば、世界各国の国際空港は一刻も早く営業を停止して、空港を作り直さなくてはならないでしょう。
こちらはタイ・チェンマイ国際空港の衛星写真です。滑走路が完全な直線ではなく、くにゃくにゃと歪んでいるのがわかると思います。
私はチェンマイにいく直前にたまたまグーグルマップでこの歪みを発見して、「おい、これって無事に着陸できるのか」と内心むちゃくちゃ心配になってしまいました。着陸時にも心配で飛行機の窓の外を見ていたのですが、飛行機は特に何事もなく、無事に着陸してくれました。
後になってから気がついたのですが、画像の滑走路の中心に黒い筋があります。
これは飛行機が着陸時に残したタイヤのゴムの跡ですが、画像ではこれが滑走路の歪みに合わせてくにゃくにゃとしているのがわかります。
どこに滑走路に合わせてくにゃくにゃと着陸をする飛行機があるでしょうか。よく考えればわかることですね。
明らかに画像処理の問題です。
その他の空港
引き続き Google map を使って世界各地の空港を探してみると、
マレーシアの玄関口、クアラルンプール国際空港の滑走路も歪んでいるのを見つけました。
また、日本の新千歳空港も歪んでいます。
もしこれらの画像を見て、今後北海道へ行くのに飛行機は使うべきではないなどと言い出す人がいるとしたら、日本の教育こそいよいよなのかもしれません。
三峡ダムの問題点
三峡ダムが大きく歪んでいるというのはデマだったわけですが、今回のニュースをきっかけとして、再び三峡ダムの安全性に関するいろいろな問題が吹き出してきています。
ダムにはすでにヒビが入っていて、水が漏れ始めている、という人もいますが、それはどこから出てきた情報なのでしょうか。中国政府としてはそんな情報は死んでも漏らさないでしょう。そんな事実が広まったとしたら、国中が大パニックになってしまうからです。
指摘されている様々な問題点の中で、どこまでがデマで、どこまでが真実なのか、私には判断がつきません。
ダム湖の底にとてつもない量の土砂が溜まっている、という人もいます。確かにそれは想像に難くありません。長江の上流地域ではしょっちゅう土砂崩れや洪水が発生しているからです。
もしも今後老朽化や安全面の問題などを理由にダムをとり壊すことになるのであれば、中国政府はダムの建設に伴い発生した大量の移民に申し訳がつく程度の、しっかりした理由をでっち上げる必要があるでしょう。
三峡ダムを見に行って見た
ちなみに、私は2017年に三峡ダムを訪れたことがあります。
その時はダムの右側の付け根のところまで登らせてもらえて、横からしばらくダムを眺めていました。
その当時のダムのラインは、言わずもがな、ビシッと直線でした。
その写真があればよかったのですが、当時の私は「観光地で写真を撮るなんてミーハーすぎる」と思い込んでいて、どこへ行ってもほとんど写真を撮る習慣がなかったものです。
ダムを写した写真はこの一枚しかありませんでした。
ダムを撮っているのではない、ダムに群がる人々を撮っているのだ。確かそんなことを考えながら撮った一枚です。
航空写真で眺める楽しい中国はこちらの記事をごらんください。
6月の香港200万人デモのレポートはこちら。
香港デモについて、周囲の反応を聞いてみた。