前回の記事では、中国には56もの民族が暮らしていて、日本とは少し事情が異なっている、ということをご紹介しました。
中国では、例えば入学書類など、公式な書類にも民族を記入する欄があったりします。私もこちらで入学書類を提出する際に、どう書いたらいいのかわからなくて戸惑ったものです。
中国人は一人一枚身分証を持っていますが、そこにも民族が明記されています。
人口一億人の少数民族
人口の比率からいうと、中国14億人のうち、漢族の人口が92%を占めていて、少数民族の割合はわずか 8.49% 、しかいないように見えますが、8%でもなんと合計で約1億1379万人もいます。
中国には1億人以上の少数民族が住んでいる、ということになります。全然少数じゃないだろ。
55の少数民族 人口
それでは中国にはどんな民族が暮らしているのでしょうか。
人口と合わせて一覧にしてご紹介していきます。
数字は2010年国勢調査(人口普査)の結果を元にしています(中国では10年に一度しか国勢調査が行われないので、これが最新の数字)。漢族は圧倒的多数なので除いています。
カッコ内は仮名表記と英語表記です(仮名表記は自己流で書いているので正しいかどうかわかりません。参考までに)。
1、壮族(ジュアン Zhuan) 16,926,381
2、回族(ホイ Hui) 10,586,087
3、满族(マンシュウ Manchu) 10,387,958
4、维吾尔族(ウイグル Uighur) 10,069,346
5、苗族(ミャオ Miao)(モン Hmong) 9,426,007
6、彝族(イ Yi) 8,714,393
7、土家族(トゥジャ Tujia) 8,353,912
8、藏族(チベット Tibet) 6,282,187
9、蒙古族(モンゴル Mongol) 5,981,840
10、侗族(ドン Dong) 2,879,974
11、布依族(ブイ Buyi) 2,870,034
12、瑶族(ヤオ Yao) 2,796,003
13、白族(バイ Bai) 1,933,510
14、朝鲜族(コリアン Korean) 1,830,929
15、哈尼族(ハニ Hani) 1,660,932
16、黎族(リー Li) 1,463,064
17、哈萨克族(カザフ Kazahk) 1,462,588
18、傣族(ダイ Dai) 1,261,311
19、畲族(シィェ She) 708,651
20、傈僳族(リリ Lili) 702,839
21、东乡族(ドンシャン Dongxiang) 621,500
22、仡佬族(ゲーラオ Gelao) 550,746
23、拉祜族(ラフ Lahu) 485,966
24、佤族(ワ Wa) 429,709
25、水族(スイ Shui) 411,847
26、纳西族(ナシ Naxi) 326,295
27、羌族(チャン Qiang) 309,576
28、土族(トゥ Tu) 289,565
29、仫佬族(ムーラム Mulam) 216,257
30、锡伯族(シーボー Xibe) 190,481
31、柯尔克孜族(キルギス Kirghiz) 186,708
32、景颇族(ジンポー Jingpo) 147,828
33、达斡尔族(ダウォール Daur) 131,992
34、撒拉族(サラ Salar) 130,607
35、布朗族(ブーラン Blang) 119,639
36、毛南族(マオナン Maonan) 101,192
37、塔吉克族(タジク Tajik) 51,069
38、普米族(プーミ Pumi) 42,861
39、阿昌族(アーチャン Achang) 39,555
40、怒族(ヌー Nu) 37,523
41、鄂温克族(エヴェンキ Evenki) 30,875
42、京族(キン Gin) 28,199
43、基诺族(ジノ Jino) 20,899
44、德昂族(デーアン De'ang) 20,556
45、保安族(ボーナン Bonan) 20,074
46、俄罗斯族(ロシア Russian) 15,393
47、裕固族(ユグール Yugur) 14,378
48、乌孜别克族(ウズベク Uzbek) 10,569
49、门巴族(モンパ Menba) 10,561
50、鄂伦春族(オロチョン Oroqin) 8,659
51、独龙族(ドゥーラン Drung) 6,930
52、赫哲族(ヘーゼー Hezhan) 5,354
53、高山族(ガオサン Gaoshan) 4,009
54、珞巴族(ローバ Lhoba) 3,682
55、塔塔尔族(タタール Tatar) 3,556
みなさんはいくつくらい知っていたでしょうか?
ほとんど聞いたことないよ!
という方もいるかもしれません。
大丈夫です。中国人でも全部知っているという人は多くありません。
そういえば以前、学校の「言語人類学」という授業中で、こんなことがありました。
先生「あなた出身は?もしかして少数民族?」
学生「はい、トゥ族です」
先生「ん?何族?」
学生「トゥ族です」
先生「トゥ族?どういう字で書くの?どこに住んでるの?」
普段の生活で知っている人が少ないのならば理解できますが、まさか人類学の先生にまで忘れられているなんて。さぞがっかりしたことだろうと思います。
その学生の、だんだん尻すぼみになっていった声が私は忘れることができません。翌年からその授業は閉鎖されてしまいました。
もしも自分が彼ら彼女らに出会ったときに失望させてしまわないためにも(そして彼らに喜んでもらうためにも)、民族の名前くらいは覚えておいてもいいかもしれませんね。
普段少数民族に出会うことがあるの?
普段の生活で少数民族に出会うことはあるのか。少数民族の多い地域へ行かなければ、そこまで出会う確率は高くないと思います。
もし出会ったとしても、都会の中で民族衣装を着ていることなどほとんどないし(もし着てたらみんなから写真撮られる)、何族かなんて普通は自分から人に言いふらすことでもないし、見た目がよっぽど特徴的でなければ周りが気がつくこともないと思います。
私は、学校にいるという環境もあってか、上の表の人口1位の壮族の方から人口10位の侗族の方までそれぞれの民族の方に会ったことがあります。
そのほかには、撒拉族,东乡族,俄罗斯族の方にも会いました。
もしかすると今までの知り合いの中にも、話していないだけで実際は少数民族だという方がいる可能性もあります。でも普段の生活の中で誰がどの民族かなんて意識することもほとんどないですし、そこまで追求することでもないように思います。
少数民族はみな何語で話しているの?
それぞれの民族は、それぞれの言語を持っています。
ひと昔前までは、少数民族の多い地域の小学校や中学校はすべて自分たち民族の言語で授業を行っていたそうです(漢族の学校であっても、オール方言で授業をしていた)。
現在では、普通話の教育を優先させる親が多く、また中国政府の教育政策もあって、自分の民族の言葉は聞き取れるけども話せない、もしくは聞き取れも話せもしない、といった子供が増えてきているようです。(漢族の各地の方言もやはり同じような状況)