しぼりたてチャイナ

何かとディープな中国の知られざる魅力を、無限に生しぼりしていくブログです

大気汚染の季節がやってきた!〈2〉スモッグの下で冬を越してみた 大気汚染対策

 

前回記事では中国の大気汚染が発生しやすい地域について紹介しました。汚染は主に中国北部で発生していて、中国南部はほとんど影響がないことをお伝えしました。

 

今回は実際に中国北部で一冬暮らしてみたみた感想と、冬の中国北部を訪れる際の大気汚染対策についてご紹介します。

 

 

スモッグの下で冬を越すとどういう感じなのか

私は以前、首都北京からほど近い河北省で一年間留学していたことがあります。大気汚染についてはあまり考慮に入れないで学校を選んだので、特に準備をして行ったわけではありませんでした。

 

秋の初めの9月から学校が始まり、10月の終わりくらいから何日か白く霞む日が出始め、11月以降は毎日のように発生する分厚いスモッグの元で生活することになりました。この太陽を拝める日が月に何日しかないといった状態が3月初めくらいまで続きます。えらいこっちゃですね。

f:id:xccg:20191026110605p:plain

 

大気汚染がひどい日にはみなマスクをつけて外出します。室内に入ったらマスクを外し、外に出るときにまたマスクをつけなおすという具合です。

 

大気汚染がひどいと、外出する機会自体が減ります。どこかへ行こうかな、と思って窓の外を見ても真っ白なので、あまり出かける気にはなりません。先生からもできるだけ外出しないようにと注意があります。

 

まあ、毎日のように気温が氷点下を下回る中国北部では、そもそも大気汚染のあるなしに関わらず、外に出ないで部屋の中でぬくぬくしている方が心地よいのですが。中国北部では室内の暖房設備が神がかって素晴らしいので、半袖半ズボンで一冬過ごすことができるのです。

 

慣れれば大丈夫だよ

個人的に一番キツかったのが、外で運動ができないことです。たまに運動場で走りたくなった時に、窓の外を見ると白一色で、せっかく走りたくなったのに諦めてしまう、ということが何度もありました。

 

外で運動もできないし、歩くのもできるだけ控えた方がいい。これでは運動不足になってしまいますね。運動しないのも不健康だが、運動するのも不健康。この悩ましいアンビバレントが一冬つきまといます。

 

しかし驚愕なことに、そんな真っ白な中でも、相変わらず外で運動を続けている地元の青年たちが少なからずいるのです。たまに一緒に練習していた中学生の陸上部長距離チームの学生たちが、白いスモッグを切り裂いてハードな練習をしているのを見かけたことがあります。

 

考えるだけでぞっとしますね。

 

中国のバスケ青年たちも、世紀末さながらの霞の中でひたすら技に磨きをかけています。少数ではありますが。

 

現地で知り合った人たちに、「どう?中国の生活は慣れた?」と聞かれた時に、大気汚染はやっぱりちょっときついなあなどという話をすると、「そうだよね、でも仕方ないから」と言われることが多いのですが、中には「慣れれば大丈夫、僕らみたいに小さい頃から吸っていれば、そのうちマスクもいらなくなるよ」などという人もいて、そういう境地もあるんだなあと感心したものです。

 

大気汚染を楽しむ

中国北部の大気汚染は年々大幅に改善されてきているとはいえ、これは自分の力ですぐにどうにかできる問題でもないので、一冬ずっと文句ばっかりたれていても憂鬱になってしまいます。

 

そこで大気汚染を前向きに捉える考え方をなんとか2つ、しぼり出してみました。

 

1、異郷感

雪が積もると特別な感じを味わうことができます。日ごろ見慣れた景色が白く一変し、人々に何か非日常な感じを与えます。それと同じように、大気汚染がひどい日にはどこか遠い異世界に迷い込んでしまったかのような、不思議な感覚を味わうことができます。

 

f:id:xccg:20191026114424p:plain

 

霧の向こうからぼんやりと人が現れてきたり、ネオンライトの看板が空中に浮いていたり。

 

f:id:xccg:20191026120308p:plain

 

現地では、「この世の仙境ここにあり」などと皮肉とやるせなさを込めて比喩されます。

 

2、謎の一体感

11月のある日のことでした。私は数人の大学一年生と一緒に先輩のところへお呼ばれしてお茶を飲みに行きました。ちょうど翌日初雪が降る予報が出ていたこの日、一緒にいた1年生の中には、中国南部の出身で今までまだ雪を見たことがない人もいて、明日みんなで一緒に初雪を迎えるんだ、というワクワクした雰囲気に満ちたお茶会でした。

 

するとここで先輩が注意をいれます。

 

曰く、「初雪は、食べてはいけない」

 

聞くと、初雪は空気中の汚染物質と一緒に降りてくるからとっても汚いよ。初めて雪を見て興奮して食べてみる一年生が毎年いるけど初雪はいかん。とのこと。

 

初雪だけでも特別なのに、その初雪もまた特別。みんなのワクワクも一層増します。(初雪だけに限らず雪はいつ降っても灰色っぽいことにすぐ気がついた)

 

大気汚染の下でみんなで一緒に冬を乗り切るんだ、という不思議な一体感があったように私は思います。みんなでマスクをつけて、みんなで室内に避難して、みんなで一緒に大気汚染の文句を言います。大気汚染が共通の感情のはけ口になるのです

 

大気汚染の対策

最後に、基本的な大気汚染対策について簡単にご紹介します。

 

1、できるだけ外出しない

 これが一番の対策ですね。ただ、一度大気汚染の味を体験してしまえば、誰かに言われなくても外出したくなくなると思います。

 

2、外出するならマスクをつける

 私は日本を出発する際に、それっぽい普通のマスクを買って行ったのですが、現地に着いてから友人にこんなマスクじゃ全然ダメだよ、と言われてしまいました。顔につけるとスキマができてしまうからです。

 

友人がお勧めしてくれたのは顔面にぎゅっと密着するタイプのマスクです。

 

ゴムの部分が普通のマスクより強靭なものや、呼吸がしやすいように通気口があるもの、活性炭入りのもの、中のフィルターが交換できるもの、丸洗いして何度も利用できるものなど、様々なバリエーションがあります。

 

お店や淘宝などネットショップで「放雾霾口罩」を探すとこういうマスクが見つかります。

 

3、帰ってきたらうがい、手洗い、シャワー

うがい手洗いは普通にするかもしれませんが、シャワーを浴びるとさらにすっきりしますね。髪の毛にも埃がつきますから。鼻や耳を洗うと意外と黒っぽくなっていたりします。目を洗ってもすっきりします。

 

4、窓を開けない

 換気したくなるかもしれませんが、大気汚染のひどい時は空気がよくなるまで待ってから換気を行いましょう。

 

また、中国北部は乾燥していて、年中少し埃っぽいので、大気汚染があるないに関わらず換気もほどほどにしておいた方が部屋の中の電子機器に優しいかもしれません。