しぼりたてチャイナ

何かとディープな中国の知られざる魅力を、無限に生しぼりしていくブログです

中国西南部 カルスト大帝国の逆襲(1)数百万の突起物に分け入る

 

4月某日、私は貴州省南部の山奥にある侗族のおじさん宅をあとにして、一路南下し,おとなり広西壮族自治区北部の河池市を目指した。

 

何をしに行くのかというと、ただあのへんの地形を観察しに行くだけなのである。実はここ最近ずっとあの辺の地形が気になって仕方なかったのである。

 

今のご時世でそんなスパイまがいなことをしていると即刻連行、監禁されてしまいそうなのだが、地形萌えの私の興味は純粋に地形にしかないので、当局の方にはどうかご理解いただきたいと思う。私はただ広西壮族自治区の自然の素晴らしさを世間にアピールしたいだけなのです。

 

 

さて、広西壮族自治区で世界的に1番有名なのは、世界遺産にも登録されている桂林市の陽朔である。やたらとんがった岩山が水面の向こうに林立している、山水画のあるあの桂林である。

 

しかし、1番があって2番がないのではなかろうか。広西では桂林以外にも2カ所世界遺産に登録されている場所があるのだが、どちらもとても世間に認知されているとは言い難い。広西とはそれだけの場所なのであろうか。総面積24万平方メートルという、本州とほぼ同じ面積を誇る広大な広西壮族自治区に、他に何もないというのか。

 

そんなことはない。

 

私はむしろこう思う。こんなにやばいところもそうそうない。

 

Google Map で遊んでいて、何かの間違いで広西壮族自治区を拡大してしまった人はわかっていただけると思う。そこには思わず自分の目を疑う光景が広がっている。

 

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山、山、山。

 

無数の小さな山が密集していて、その隙間に小さな村が点在しているのがおわかりいただけると思う。地形の特異さ、道の複雑さ、村の隔絶され具合など、どれも私の興味をそそる要素ばかり。ちなみに、上の画像は広西壮族自治区のごく一部にすぎないことをお断りしておく。

 

目測でいうと、広西壮族自治区全体の3割程度の面積だろうか。とにかく広西の広大な面積がこのボツボツニキビで覆い尽くされているのだ。いったい全体どうしてこんなことになってしまったのだろう。何をどうすればこういう地形になるのだろうか。広西は思春期を迎えたのだろうか。 

 

ちょうどそのころ、中国の地理雑誌、『中国国家地理』の2018年1月号と2月号で「広西壮族自治区特集」が組まれていた。2号にわたって広西を紹介する大型特集である。その特集の中で、広西壮族自治区はこのように紹介されていた。

 

「桂林山水甲天下,广西处处是桂林」

 

桂林の山水は天下一、てか広西どこ行っても桂林やし。

 

なんと!

 

やっぱりそうだったのか。私の目は間違っていなかった。そうかそうか、『中国国家地理』もようやく気がつき始めたのか。

 

中を読んでみると、広西の地形についてものすごく詳しく紹介されていた。広西には桂林のようなボツボツの小山がいたるところにたくさんあるし、天坑(巨大なたて穴)もたくさんある。巨大な洞窟もあれば巨大地下河川もあちらこちらにあると。そして、、、こういった地形が形成される要因は、石灰岩にある、、。

 

石灰岩

 

カルスト大帝国の君臨である。

 

そうなのだ。中国の西南部にはワールドクラスの一大カルスト地域が広がっているのである。省でいうと雲南省の東部から貴州省のほぼ全土、重慶市湖南省西部から広西壮族自治区にかけての広大な地域に石灰岩が眠っている。日本がいくつもすっぽり覆われてしまうような面積である。

 

石灰岩について書いていたらもう止まらなそうなので、また別の記事にしたいと思うが、とにかく人間の目を惹きつけてやまない奇っ怪な地形の多くが石灰岩と関係があるのである。

 

というわけで、私は雑誌を携えて広西壮族自治区へ向かった。実際に突起物の間に分け入って行って、突起物と戯れてみたいと私は思った。どれか一つ突起物のてっぺんに登れたらなおよい。

 

とりあえず、地図上でポコポコ山に囲まれている大きな都市、河池市へ列車で向かうことにした。河池へついてから、雑誌の記事を参考にしながらルートを決めようと考えた。決まっているのは3日後に南寧から飛び立つ飛行機だけである。

 

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列車が貴州から広西へ入り始めたころ、車窓から見える山々が早速ポコポコし始めた。夢中でシャッターを切る。すごい、本当にとんがってる。

 

列車に揺られること3時間半、日が暮れた河池駅へ到着。列車を降りるとそこには石灰岩の白い岸壁が浮かび上がっていた。

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無言の白い膨大な質量に囲まれている感じ、圧迫感があってたまらない。

 

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河池の物価が思った以上に安い。一泊15元は深圳の日雇い街、三和の最低価格と同じ値段である。ここはインドか。

 

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パイナップルもすんごい安い。3個で10元。さすが南国。

 

駅前の適当な宿で一夜を明かして、今後のなんとなくのプランを立てた。バスと徒歩でこのポコポコカルスト帝国を南寧まで縦断してみることにした。

 

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共産党のスローガン、上には壮族の言語、壮語が書かれている。広西ならではの光景。

 

 

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早朝、バスターミナルまで移動。最初に行ったバスターミナルは東側の旧バスターミナルで、もう西側に移転してしまったよ、と言われた。宿泊していたのが西側に近かったので悔しい思いをする。

 

バスターミナルの郊外新設はここ数年の中国各都市の流行なのか、新設されたターミナルが百度地図に反映されないまま古いバスターミナルへ行ってしまう、ということが今までも何度もあった。

 

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本当にポコポコそそり立っている。

 

続く。