ご存知の通り、中国は食の宝庫です。
ここでは、薄味が食べたい早朝も、辛いものが食べたい金曜日の夜も、甘いものが食べたい午後も、それぞれ極められた理想の料理を見つけることができるでしょう。
肉を毎日食べたい人も、野菜を一生食べたい人も、海鮮しか食べない人も、みな理想の生活場所を見つけることができるでしょう。
あらゆる食材とあらゆる料理方法とを研究し尽くした中華料理は、味覚の小宇宙を私たちに提供してくれます。
しかし中には食の追求のあまり、少し行き過ぎてしまった料理がいくつかあります。
ここでは、そんな「中国十大残酷料理」を紹介していきたいと思います。
表題では「中国十大残酷料理」と勝手に名前をつけてしまいましたが、中国語では「中国十大禁菜」と呼びます。禁止されているという意味ではなく、ここでの「禁」は「極度に秘めたるべきもの」のような意味だと思います。
「中国十大禁菜」と検索するとたくさん文章が出てくるので、それらを参考にしていきたいと思います。
*おおよその残酷さ順で並べました
醉虾
上海や寧波で今でも食べられているエビ料理です。
お椀の中に、紹興酒と、酢と、ニンニクを入れ、活きたエビを投入し、フタをかぶせてエビが酔い潰れるのを待ちます。はじめのうちはエビが中で必死に跳ね回るそうです。暴れる音が聞こえなくなってきたら、エビが酔いつぶれたしるし。食べごろです。ぷりぷりの新鮮なエビと、清冽な酒の香りが楽しめるそうです。
この料理は、エビを酔わすこともせずに踊り食いしてしまう日本人からしたら、なんてことないですね。
寧波では2度、友人のお宅でご飯をご馳走になったことがあるのですが、彼らは確かに毎日海鮮ばっかり食っています。
残酷度★
龍須鳳爪
龍須とは龍のヒゲ、鳳爪とは鳳凰の足という意味ですが、決してホンモノの龍や鳳凰を使うわけではありません。
龍須はコイのヒゲを、鳳爪は鶏の足を使用します。
北京料理だそうですが、具体的にどのように料理するのかはすでに継承が途絶えてしまったためにわからないそうです。
この料理、何がそんなに残酷なのかというと、中国では素材が新鮮であれば新鮮であるほどに味や口当たりが良くなってくるという考え方から、この料理では活きたままコイのヒゲを切り、鶏の足をえぐります。一匹や二匹だけでは料理にならないため、料理のために大量のヒゲなしコイと、歩けない鶏が生産されることになり、その光景が残酷だということです。
このあと出てくる残酷料理のほとんどが、この「活きたまま料理したい」がために残酷になってしまったものばかりとなっています。
残酷度★★
烤鴨掌
活きたカモを調味料を入れた鉄板の上に乗せます。その後鉄板を加熱します。あまりにも熱いため、カモは急いで歩き回ります。しまいには飛び跳ね始めます。足に火が通ったら、足を切り落として、お皿に乗せて完成。この時カモはまだ活きています。カモはこのあと別の料理に使われるそうです。
唐の武則天の時代にもうあった、と言っている人もいます。河北料理だそうですが、今もこれをやっているところがあるかどうかは不明です。
残酷度★★★★
脆鵞腸
活きたガチョウの肛門の周りを丸く切り取ります。人差し指を肛門に入れて、ひねり、力を入れて腸ごと引き抜きます。これで新鮮なガチョウの腸が手に入ります。
これは具体的な料理ではなくて、腸の取り出し方です。
火鍋の具材にもガチョウの腸はよく出てきますが、それがみんなこのように処理したものなのかどうかは不明です。
残酷度★★★★
風干鶏
風干鶏は速さが勝負だそうです。
まずは活きたままの鶏の毛を素早く引き抜き、肛門をくり抜きます。その穴から内臓を引っ張り出し、調味料を詰め込んだあと、素早く傷口を縫い合わせ、風通しの良いところで干します。この時点ではまだ半分活きたままの鶏は、風に吹かれてグーグー唸っています。血抜きは行わないそうです。
一説によると、これは劉備玄徳の妻が考え出した料理で、劉備本人も好んで食べたそうです。
湖北省荆門市にも同名の伝統料理がありますが、どうやら少し違うもののようです。
残酷度★★★★★
鉄板甲魚
すっぽん料理です。
作り方は烤鴨掌のときと同じく、調味料を入れた鉄板の上に活きたすっぽんを乗せ、ゆっくりゆっくりと熱します。この時、すぐに火を通してしまわないことがコツだそうです。そうすると、すっぽんはあまりにも熱いので、必死に調味料を飲みます。これによって、外からだけではなく、体内からも味がしみわたるというわけです。
箸を持ちながら、のたうちまわるすっぽんを眺める時間が、美食者を興奮させるそうです。
残酷度★★★★★
碳烤乳羊
羊料理です。
間も無く子供を産もうとしている母羊を丸焼きにします。もちろん母羊がメインではありません。焼けたら、子ヤギをお腹の中から取り出してその柔らかいお肉をいただきます。
中国では羊もヤギもみな「羊」と呼ぶので、これがどちらの動物なのかわかりません。
残酷度★★★★★
澆驢肉
非常に残酷なロバ料理です。
まずは活きたロバを縄で縛るなり固定し、動けないようにします。次に沸騰したお湯を用意します。お客さんが食べたい部分を指定すると、コックがその部分の皮をひと剝ぎして新鮮な肉を露出させ、そこに沸騰したお湯をひしゃくですくってかけます。火が通ったら、その部分の肉をそぎ落として、お皿にのせてタレに合わせて食べます。
これは愛護団体から抗議がきてもおかしくない食べ方ですね。
残酷度★★★★★★★
三吱児
活きたまま食べるネズミの新生児です。
吱(ジー)とは、ネズミの鳴き声の擬音語です。
まず、生まれたてのネズミの新生児を箸で挟むと、1回目のジー。
次に箸で挟んだまま、タレにひたすと、2回目のジー。
そのまま口の中に入れると、最後のジー。
3つのジーのあとに、ネズミのベイビーはこと切れます。
少女時代の歌詞と完全に一致しているのが怖いですね。
残酷度★★★★★★★
猴頭
最後はこちら、猿の頭、つまり猿の脳みそです。これは聞いたことのある方も多いのでは。
まず中央に小さな穴をあけた机を用意します。活きた猿の頭をそこにはめ込んで、金具で強く固定します。そのあと、机の面に合わせて勢いよく包丁を斬りつけ、頭を開きます。柔らかい豆腐のようなものが見えるので、熱した油を注ぎながらスプーンでかき混ぜ、ネギをまぶして完成です。
この間猿はずっと絶叫し続けているそうです。
もうここまでくると、一体食べるのが目的なのか、遊ぶのが目的なのかよくわかりません。
残酷度★★★★★★★★
以上、「中国十大残酷料理」でした。
昔の人のイノベーティブも、少し度が過ぎてしまったのでしょう。本来の味の追求から、食の体験への追求へ、ひいては動物をもてあそぶことに重点がいってしまっているような感じがします。
中国にはこれ以外にも、犬猫を食べるとか、人間の胎盤を食べるとか、生まれる前のひよこを食べるとか、いろいろな料理があります。
また機会があれば紹介していこうと思いますので、よろしくお願いします。
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